徳蔵神社の社叢,かのんの樹木図鑑
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徳蔵神社の社叢

徳蔵(とくら)神社は,岡山市北区御津河内(旧:御津郡御津町大字河内)にある由緒ある神社で,その社叢は地域の自然植生を知る手がかりとして貴重なものと見なされている。
今回,わずか2時間程度であるが,社叢に入ってその植生をざっと見てきた。
徳蔵神社は、古事記に登場する天児屋根命(あめのこやねのみこと)を祭っているといわれる由緒ある神社で、地元の鎮守の神として住民に親しまれています。
周囲の森林は、シイノキ(ツブラジイ)を優占とし、アラカシナナメノキスギなどが混生し、自然の状態がよく保存されています。このようなシイノキの大木が群生する森は県下では珍しいものです。(岡山県)

左の案内板より抜粋
社叢の中心部は薄暗く,そのため林床には草本類が少なく,とてもすっきりとしていた。また,傾斜もさほどきつくなく歩きやすい。目通り周囲が2m,高さが20mに近い巨木が点々とあり,その間を埋めるように亜高木層を形成する樹木がある。ちなみに,この写真の奥の方には,ツブラジイ(コジイ)シリブカガシが見える。また,手前の赤茶けた木はサカキ
高木層
まず,目に付いたのは林床に転がる多数のドングリ。圧倒的にシリブカガシが多い。コジイ林との思いこみがあったのでやや意外に思い,ツブラジイ(コジイ)のドングリを探すが,なかなか見つからなかった。野ネズミらに人気があるのか,たまたま不作だったのか…。
▲シリブカガシの堅果(どんぐり)
林床のどこを見ても目に付いた。光沢があって美しいドングリだ。
▲ツブラジイの堅果(どんぐり)
小さいせいもあろうが,落ち葉をかき分けながらようやく見つけられるほど少なかった。
困ったのはあまりに高すぎて葉が見えないこと。双眼鏡をもってはいたのだが,質感までは分からずなかなか判断が難しかった。なおかつ,私自身のシリブカガシに対する見識が浅く,樹皮での区別がよく分からない状態だった。取り合えずひこばえを頼りに見て歩いた。
▲シリブカガシの大木
「灰黒色でなめらか。割れ目はない。縦に皮目の列がある。」(1)と図鑑には記述があるものの,皮目の列については,よく分からない…。ただ,私なりに見て回った中では,シリブカガシの方が,幹に筋張った隆起が目立つような印象を受けた。(イヌシデのような…)
▲ツブラジイの大木
「灰黒色でなめらか。ふつう割れ目はできない。」(1)と図鑑には記述があるものの,スダジイほどではないが,やはり浅い割れ目があるようだ。
やはり,フィールドでは教科書通りにはいかない…。
案内板にあるナナミノキ(ナナメノキ)については確認できなかった。アラカシは神社の入り口付近の林縁部では多かったが,林内ではほとんど見かけなかった。社叢の周辺部ではスギ,ヒノキ,竹が多くなるように感じたが時間の制約もあり深入りしなかった。
亜高木層
社叢の中心部は圧倒的にサカキが多い印象を受けた。上の林床の写真を見るとその個体数の多さが分かる。ほかにはヤブツバキカナメモチなど。少し周辺にいくとアセビの大きな木もあった。
カナメモチ(バラ科)
赤い果実がひときわ目を引いていたが,全体としては果実をつけた株は珍しかった。ギャップに面した個体には果実が実っていた。
サカキ(ツバキ科)
亜高木では圧倒的に多かったのがサカキ。目通り周囲30〜50pのものが多かった。
低木層
マンリョウ,カナメモチ,シキミ,タカノツメ,ムベ,ゴンズイ,シロバナウンゼンツツジ,シリブカガシ,ツブラジイ,ヤブニッケイ,テイカカズラ,ミヤマシキミ,カクレミノ,ネズミモチなど。
樹林の一部にギャップがあり,そこでは特に種類が多かった。特に目立っていたのはアオキ,ソヨゴの幼木,フユイチゴなど。
▲カナメモチ(バラ科)の幼木 ミヤマシキミ(ミカン科)
▲アオキ(ミズキ科)
ギャップでは,低木層が発達していた。上の林床の様子と比較するとよく分かる。特にギャップに多かったのはアオキ。この場所以外ではあまり見かけなかった。
今回(2012.1.2),初めて徳蔵神社の社叢を歩いてみて身近にこんな素敵なところがあったのかと感激した。特に自然状態のツブラジイを県内で観察できる場所は稀なので,ときどき足を運びたい。
参考・引用文献
(1) 高橋秀男・勝山輝男監修『樹に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑3〉,2001年
(2) 千葉喬三監修,山陽新聞社,岡山の樹木(上),1989年
(3) 狩山俊吾著,岡山県の樹木図鑑,倉敷市立自然史博物館,2009年
(注)作者は専門家ではありません。あくまで趣味のページですので,まちがった情報もあるかもしれません。まちがいを発見された場合ご一報いただければ幸いです。

 

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