カバノキ科ハンノキ属ケヤマハンノキ,学名:Alnus hirsuta,かのんの樹木図鑑
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カバノキ科 ハンノキ属 ハンノキ亜属】  Alnus hirsuta Turcz.
  ケヤマハンノキ  
【 毛山榛の木 】   別名/ −−
 ●落葉高木(らくようこうぼく)
 ●高さ:10〜20m
 ●花期:4月 
※吉備高原では毎年2〜3月には開花している…
 ●果期:9〜10月
 ●分布:北海道,本州,四国,九州
参考文献
・高橋秀男・勝山輝男監修『樹に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑3〉,2001年,P170
・岡山県編,岡山県野生生物目録2009,岡山県生活環境部自然環境課,2009年
2008.6.28 岡山県吉備中央町

葉は互生
(ごせい)。基部は切形,円形,浅い心形など,先端は尖る。縁には欠刻状の重鋸歯(じゅうきょし)がある。両面ともやや伏した軟毛が全体に生え,脈上には毛が密生している。葉柄(ようへい)は長く,上面にごく浅い溝がある。全体に褐色の軟毛が密生している。
2007.2.20 岡山県加賀郡吉備中央町
 私の住んでいる吉備高原では,道路沿いでよく目にする。根に共生する放線菌の窒素固定能力により,貧栄養にも強く,攪乱された土地にいち早く入り込むパイオニアプランツである。また,ヤシャブシの類とともに,のり面の保護のため利用されることも多い。
 花は風媒花で,美しい花弁はないが,吉備高原では1月下旬から花穂
(かすい)が伸び始め,2月には満開となる。葉の展開前にいち早く開花するため,2月頃のケヤマハンノキはとてもよく目立つ。
2003.7.30 岡山県加賀郡吉備中央町 2003.7.30 岡山県加賀郡吉備中央町
側脈(そくみゃく)は6〜8対あり,うら面にへこんでいる。葉脈(ようみゃく)の様子はかなり特徴的である。 全体に毛が密生しているのが,ヤマハンノキ(var.sibirica)との最大の違い。吉備高原ではケヤマハンノキばかり見かける。
2003.7.30 岡山県加賀郡吉備中央町 2004.11.9 岡山県加賀郡吉備中央町
先端の緑色のものは,雄花序の冬芽。7月末にはすでにこのような状態で,来年春先の開花にそなえている。 上部にあるのが,雌花序。大きくて下にあるのが雄花序の冬芽。7月の様子と比べると随分と大きくなってきている。
2006.3.7 岡山県高梁市有漢町 2006.3.7 岡山県高梁市有漢町
枝先に長く垂れ下がっているのが雄花序。もうずいぶん前から展開しているのでおそらく花粉はもうほとんど出し尽くしているだろう。長い柄をもっているのが特徴である。
さらに下方には赤味を帯びた小さな雄花序が数個ある。
雌花序のアップ。
果鱗の間から出ている赤い細いものが雌しべである。


ちなみに,ハンノキは雌花序が上向きにつくが,ケヤマハンノキは下向きに付くのが特徴。
2006.3.7 岡山県高梁市有漢町 2006.3.7 岡山県高梁市有漢町
雄花序のアップ。 樹皮(じゅひ)はなめらかで,灰色の横長の皮目が目立つ。割れ目が目立つハンノキとは,まったく異なる雰囲気である。
2004.3.3 岡山県加賀郡吉備中央町 2004.4.10 岡山県加賀郡吉備中央町
こちらは,雌花のようです。赤いけばけばしたものが雌しべ。
雌しべに黄みがかったものが付着しているが,花粉だろうか?
越冬した果穂(かすい)
2004.11.9 岡山県加賀郡吉備中央町
これは,葉芽(はめ・ようが)。タニガワハンノキやヤマハンノキはほぼ無毛なので冬芽を見れば容易に区別ができる。
 ● 幼木(高さ30cm程度)
2003.11.16 岡山県加賀郡吉備中央町 2003.11.16 岡山県加賀郡吉備中央町
幼木だが葉の大きさは,ほぼ成木と同じぐらい。葉柄(ようへい)が赤味をおび,うら面は主脈(しゅみゃく)上のみに白い短毛が密生している。枝も赤味を帯び,短毛が密生している。

※この幼木については,ケヤマハンノキと判断しましたが,違う可能性もありますので,参考までにご覧下さい。
2003.11.16 岡山県加賀郡吉備中央町
見どころ
パイオニアプランツの生き方
ケヤマハンノキの根には放線菌が共生している。放線菌は空気中の窒素を固定する能力があり,ケヤマハンノキは,その窒素を利用することで,貧栄養の土地でも高木にまで生長できる。
本種やその仲間が“のり面”保護に利用されることが多いのはそのためである。
吉備高原都市周辺では,同様にオオバヤシャブシヒメヤシャブシも道路沿いでよく目にするが,いずれものり面保護用に導入されたものが野生化したと考えられている。

パイオニア的特徴をもつ植物は,一般的に寿命は短く,ケヤマハンノキも20年程度で成木になり,40年程度で寿命を終えると言われている。栄養の乏しい土地で,放線菌の力を借りていち早く生長,どんどん種子をばらまき,他の競争相手が追いついてくる頃には,さっさと寿命を終えて世代交代をしてしまうという生き方である。

図鑑では,タニガワハンノキ A. inokumaeや,ヤマハンノキ A. hirsuta var. sibiricaとの区別が問題になることが多いが,岡山県に限って言えば,タニガワハンノキは自生しない。ヤマハンノキは,ケヤマハンノキの変種とされ,全体に毛がないものを指すが,中間型もあるということ(※1)。
葉の下面
ケヤマハンノキ 軟毛が密生
ヤマハンノキ ほぼ無毛
名の由来
葉の下面がほぼ無毛のヤマハンノキに対して,毛の多いヤマハンノキの意味。
ヤマハンノキは,湿地に多いハンノキに対して,山間部に多いハンノキの意味。
ハンノキは,ハリノキ(榛の木)の転訛とされている。 しかし,この「はり」が何を意味するかについては諸説あり,雑木や草が群がり生える「やぶ」の意味であるとする説や,開墾の意味の古語「墾(針)」であるとする説などがあるようだ。
私としては,ハンノキが稲のはざ掛けに用いられたことから,「梁の木」だったのではないかと思うのだがいかがだろうか。
岡山県情報
岡山県では県内全域に広く分布している。砂防緑化様に植栽されたものが野生化したと考えられている。
吉備高原都市周辺では,同様にのり面工事のためにヒメヤシャブシオオバヤシャブシが多く用いられたようである。
開花時期に,少しずつのずれがあるのでまとめてみた。
ケヤマハンノキ オオバヤシャブシ ヒメヤシャブシ
2月〜3月 3月下旬〜4月 4月〜5月上旬
メール(注)作者は樹木の専門家ではありません。あくまで趣味のページですので,まちがった情報もあるかもしれません。まちがいを発見された場合ご一報いただければ幸いです

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