クマツヅラ科クサギ属クサギ,学名:Clerodendrum trichotomum,かのんの樹木図鑑
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 【クマツヅラ科 クサギ属】  Clerodendrum trichotomum
  クサギ  
【臭木・常山木】   別名 /クサギナ(臭木菜),クサギリ(臭桐)
 ●落葉小高木(らくようしょうこうぼく)
 ●高さ:4〜8m
 ●花期:7月下旬〜9月 
 ●果期:10〜11月
 ●分布:北海道,本州,四国,九州,沖縄
参考文献
(1) 高橋秀男・勝山輝男監修『樹に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑5〉,2001年,P354
(2) 松井宏光,葉で引く四国の樹木観察図鑑,高知新聞社,2002年,P160
2008.6.21 岡山県美咲町

葉は対生
(たいせい),基部は切形,またはくさび形。先端は尖る。ふつうは全縁(ぜんえん)だが,上の写真のように粗い鋸歯(きょし)があることも多い。葉の表面には脈上を中心にまばらに軟毛があり,裏面にはさらに多い。葉柄(ようへい)は比較的長く,軟毛が密生している。
裏面基部の脈腋
(みゃくえき)付近には複数の腺点(せんてん)がある。
2006.8.21 岡山県「大平山」
枝先や上部の葉腋(ようえき)から,薄紫色の集散花序(しゅうさんかじょ)を出す。
2003.6.22 岡山県「豊岡いきいきプラザ」 2003.6.22 岡山県「豊岡いきいきプラザ」
日当たりのよい林縁に多い。ちょっとした石垣のすき間や,河原などにも見られるパイオニア種。 葉は対生(たいせい)。クマツヅラ科のほとんどの樹木が対生の特徴をもつ。
2003.6.22 岡山県「豊岡いきいきプラザ」 2003.6.22 岡山県「豊岡いきいきプラザ」
葉の縁は全縁(ぜんえん)で,葉柄が長い。 葉裏の様子。脈上には軟毛(なんもう)が多い。
2003.6.22 岡山県「豊岡いきいきプラザ」 H16.12.23 岡山県吉備中央町豊岡上
皮目が多く,たての裂け目ができる。 若い木の樹皮(じゅひ)
2003.8.4 岡山県賀陽町 2006.8.21 岡山県「大平山」
花冠(かかん)は5裂し,裂片は平開する。まれに,4裂のものもある。
 花冠は白色,花筒
(かとう)は紅紫色で細い。
雄しべは4個で葯(やく)が紅紫色を帯びる。
(がく)は,紅紫色を帯び,浅く5裂する。のちに萼は濃紫色になり,深く裂けて開き,中央に果実をのせる。

クサギの花は,雄性先熟
(ゆうせいせんじゅく),つまり,自家受粉を避けるために,雄しべが先に成熟し,役目を終えた後,雌しべが成熟し,受粉体制が整う。
花には強烈な芳香がある。よい香りなのだがかなり強く,芳香剤を思わせる。花冠から長く突き出た雄しべと花柱を見ると,おそらく,アゲハなどの大型の蝶に花粉を運んでもらうことを狙っているのだろう。
私が観察した際には,アゲハチョウの飛来はなく,セセリチョウが頻繁に訪れていた。これでは,花粉はほとんど運ばれそうにない。
2007.10.31 岡山県高梁市
果実の周辺にある濃紅色は,萼片(がくへん)。黒と赤のコントラストが見事な2色効果を高めている。おそらく,鳥散布をねらっているのであろう。果実は核果(かくか),つまり藍色に見える部分の中に固い核(かく)があり,種子はさらにその内部にある。
糞と一緒に排出された核
(かく)は,発芽の条件が整うといち早く生長する。
開花前のつぼみ。紫色の萼片(がくへん)から白い花筒(かとう)がのびている。
開花した様子。萼片のさらには,葉状の包(ほう)が見える。
右の写真は,花びらが散った後,萼片の一部を取り除いたもの。なかでは果実
(かじつ)が成長しつつあった。
H16.12.23 岡山県吉備中央町豊岡上 H16.12.23 岡山県吉備中央町豊岡上
冬芽は裸芽(らが)。紫色の美しい軟毛(なんもう)に覆われている。葉痕(ようこん)は蹄のような形で,維管束痕が5〜9個もある。
「コクサギ」と「クサギ」
クサギと似た名をもつコクサギ(Orixa japonica)は,ミカン科の落葉低木。クマツヅラ科のクサギとは分類上は全く縁遠い。しかし,似た名前を持つのには理由があり,コクサギも葉に独特の匂いがある。もっとも,コクサギの匂いはミカン科だけあって柑橘系の爽やかな香りである。
かつては,コクサギは枝葉を煎じた汁で牛馬を洗いシラミ殺しに利用したといわれている。1枚の葉では爽やかな香りでも,大量に煎じればやはり臭かったのかもしれない。
クサギ菜のかけ飯
岡山県吉備中央町(旧加茂川町)ではクサギのことを「クサギナ(クサギ菜)」と呼ぶ。植物名における「菜」は,「ナズナ」「ヨメナ」「ナノハナ」など食用になることを意味している。
事実,吉備中央町には「クサギ菜のかけ飯」と称する郷土料理があり,地元のいくつかのお店でこれを味わうことができる。

春先に採ったクサギの若葉を茹でた後,乾燥させる。食べるときには水で戻して炒め,ご飯にのせていただく。
私は自分で作ったことはありませんが,何度かいただきました。好みは分かれるでしょうが,私は大好きです。
茎および葉を生薬名「臭梧桐(しゅうごとう)」,根を「海州常山(かいしゅうじょうざん)」あるいは「蜀漆(しょくしつ)といい,民間薬として煎じて下痢止め,胃のもたれに用いられる。また,痔や腫れものに外用する(2)
名の由来
枝や葉に独特の匂いあり,臭い木という意味で「クサギ」。葉に触れるだけでも独特の強い匂いが手に残るが,地方によっては若葉が食用にされるなど決して悪臭とは言い切れない。
岡山県情報
典型的な陽樹であり,岡山県内でも林縁や崩壊地,河川敷など身近なところでふつうに目にする。
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