ブナ科シイ属スダジイ,学名:Castanopsis sieboldii,かのんの樹木図鑑
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 ブナ科 シイ属】  Castanopsis sieboldii
 スダジイ
【 すだ椎 】   別名 /イタジイ(板椎),ナガジイ(長椎)
●常緑高木
●高さ:20〜30m
●花期:5〜6月
●果期:翌年の秋に成熟
●分布:本州(福島県・新潟県以西),四国,九州
参考文献
(1) 高橋秀男・勝山輝男監修『樹に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑3〉,2001年,P274
(2) 松井宏光,葉で引く四国の樹木観察図鑑,高知新聞社,2002年,P356
(3) 千葉喬三監修,山陽新聞社,岡山の樹木,1989年,P225
葉身10p,葉柄5mm,幅3p
H16.3.13 岡山県「牧場の館」 2005.8.23 岡山県「吉川八幡宮」
H14.12 岡山県自然保護センター 2009.12.6 岡山県「吉川八幡宮」
葉は互生(ごせい)。葉身は長さ6〜15pで,広楕円形。先端は尾状に長くとがる。
質は硬く表面は無毛で光沢をもち深緑色。裏面には鱗状毛
(りんじょうもう)が密生しており,黄金色に見える。縁は全縁か先端部に浅い波状の鋸歯がある。
2007.6.3 岡山県「自然保護センター」
雌雄同株,つまり,1つの株に雄花と雌花をつける。雄花序は新枝の下部の葉腋(ようえき)から上向きに伸びるが,長くなるにつれて垂れ下がるようだ。(下右写真)雌花序は,新枝の上部の葉腋からやはり上向きに伸びる。(下左写真)柱頭は3裂している。
クリと同じような強烈な臭いを放ち,アブやハエの仲間が花粉を媒介する。花被は目立たないが,れっきとした虫媒花である。
H16.8.15 岡山県自然保護センター 2006.12.11 岡山市「半田山植物園」
スダジイの堅果は,2年かけて翌年の秋に成熟する。上jの写真は,この秋に熟す果実。(昨年の春に受粉したことになる。)まだ,固い殻斗(かくと)に全身を覆われてがっちりと守られている。虫食いが意外に少ないのもこの辺りのガードの堅さに要因があるのかも知れない。 コナラなどに比べると虫食いの穴は少ないが,穴のあいたものも見かける。おそらくゾウムシの仲間だろう。
2009.12.6 岡山県「吉川八幡宮」
2006.12.11 岡山市「半田山植物園」 H15.12.14 岡山市「半田山植物園」
殻斗(かくと)がはじけて,中のドングリが露出する。ふつうは,殻斗から外れて落下する
スダジイのドングリは,ほかのドングリのような渋味がなく,そのまま食用になるが,煎るとさらに美味しい。また,殻はマテバシイのように厚くなく,爪で割ることができる。
2007.1.20 岡山県吉備中央町
冬芽は,複数の茶褐色の芽鱗に包まれる。やや扁平なのが特徴。
2011.12.31 岡山市御津宇甘
樹皮(じゅひ)は成木になると,縦向きに深いさけめが生じる。近縁種のツブラジイはなめらか。しかし,幼木では樹皮での判断は困難。
スダジイは,ツブラジイよりも寿命が長く,それだけに巨木も多い。巨木になると板根(ばんこん)が発達する(右写真)。
板根は「土が流出し下方に根が伸ばせなくなった樹木植物が支持材として発生させる。」(『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』)ものとされているが,樹種による特性が大きいだろう。日本ではスダジイのような板根は珍しい。
建築材,木部材,船舶材など木材としての有用性があるほか,しいたけのほだ木や薪炭材にも利用されてきた。堅果には渋みがなく,あく抜きをしなくても食べられる。
ツブラジイ(コジイ)との区別の難しさがしばしば指摘される。それは,中間型(雑種)の存在が知られており,明確な判断ができない場合が多いからである。
下の表に一般的に言われている両者の識別点をまとめた。最も有効とされているのは,堅果の長さである。樹皮も重要なポイントとされているが幼木,若木では判断がつかない。

樹皮 堅果の長さ 葉の厚み 葉身の長さ
スダジイ 縦に深い割れ目 12-20o やや厚い 5-15p
ツブラジイ なめらか 6-13o やや薄い 5-10p
葉の厚みについては,表皮組織がスダジイでは2層,ツブラジイ(コジイ)では1層の細胞から構成されるのが典型とされる。しかし,これについても中間型があることが知られている。
樹皮の特徴については,スダジイの方が寿命が長いこととの関連も指摘されている。
名の由来
シタダミ(巻き貝の一種)に似た堅果をつけるシイとする説がある。
この説の提唱者の前川氏は,シイと名が付く,スダジイ,ツブラジイ,マテバシイの3種について,いずれも貝と関連させて考えている。ちなみに,「マテ」は「マテガイ」,「ツブ」は「タニシ」を由来としている。
どの堅果も,縄文時代から重要な食糧だった点,堅い殻に入っているところが貝を連想させる点から,それぞれの堅果の特徴と貝を関連させる考えには納得できる。ただ,「シタダミ」が「スダ」に転訛するのかはやや疑問に思う。

別名のナガジイは,堅果が細長いことによるのだろう。とても分かりやすい。

参考引用文献
・前川文夫著,「植物の名前の話」,八坂書房,1994
岡山県情報
瀬戸内海沿岸では,瀬戸内海に近いところではコジイ,内陸部ではスダジイが優先する傾向にある。岡山県内では,社叢林を中心に半自然状態で点在する。
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