バラ科サクラ属ウワミズザクラ,学名:Prunus grayana,かのんの樹木図鑑
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 【バラ科 サクラ属】  Prunus grayana
  ウワミズザクラ
  
【 上溝桜 】 別名/ハハカ,コンゴウザクラ,ゴテンザクラ
 ●落葉高木(らくようこうぼく)
 ●高さ:15〜20m
 ●花期:4〜5月
 ●果期:8〜9月
 ●分布:北海道
(石狩平野以南),本州,四国,九州(熊本県南部まで)
参考文献
(1) 高橋秀男・勝山輝男監修『樹に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑3〉,2001年,P532
(2) 松井宏光,葉で引く四国の樹木観察図鑑,高知新聞社,2002年,P339
(3) 深津正,小林義雄著,木の名の由来,東京書籍,1993年
2008.6.23 岡山県吉備中央町「鳴滝森林公園」
2004.4.27 岡山県吉備中央町 2004.4.27 岡山県吉備中央町
2003.7.24 岡山県加茂川町
葉は互生(ごせい)。葉身は長さ8〜11pの卵形〜卵状長楕円形。基部は円形,先端は尾状にとがる。
縁には,芒状
(ぼうじょう)の細かな鋸歯(きょし)が並ぶ。
葉柄は長さ7〜10oで,しばしば赤味を帯びる。
葉身基部,左右両側に蜜腺
(みつせん)が2個ある。
両面とも無毛だが,基部付近の主脈に短毛がまれにある。上の葉の脈上には明かに毛がある。
2005.4.28 岡山県「大平山」
2005.4.28 岡山県吉備中央町「大平山」 2004.4.27 岡山県吉備中央町
ウワミズザクラの最大の魅力はブラシ状の総状花序。花期は短く,「また,今度撮影しよう」と思っていると,数日後には散っていたりする。
総状花序は,新枝の先につき,長さ8〜15p。ひとつひとつの花には5個の花弁があり,中央にひょろりと伸びた黄緑色の花柱を取り囲むように,白い花糸の雄しべが多数ある。
2011.5.9 岡山市御津虎倉 
雑木林に点在するウワミズザクラは,普段はなかなか目に付きにくい木だが,花期には豪華な花でその存在をアピールする。その相手は下にいるような昆虫たち…。
2008.4.28 岡山県総社市「ヒイゴ池湿地」
左から,ルリタテハ,カミキリムシの仲間,アブの仲間。蜜はけっこう多いようで,多くの昆虫が集まる。
2003.7.24 岡山県加茂川町 2008.8.3 岡山県真庭市蒜山
核果(かくか)は,直径8mmの球形。初めは黄色,次第に赤色になり,熟すと黒色になる。同じ果軸にいろいろな色の果実がある。果実は,生食できるほか,果実酒に利用され,かなり美味いとの評判もある。
2005.4.30 岡山県「鳴滝森林公園」 2013.6.8 岡山市御津虎倉
横向きの皮目が目立つ。いかにもサクラ属らしい樹皮。幹は直立し大木になる。 かなりの老木なのだろうか…基部の方は一見イヌザクラに見える。
総状花序 葉の基部 葉の縁
ウワミズザクラ 8〜15p,軸に葉が3〜5個つく。 円形 芒状の鋭い鋸歯
イヌザクラ 5〜10p,軸に葉がない。 くさび形 浅い鋸歯
クマリンの香り
ウワミズザクラ樹皮を傷つけるとクマリンの香りがする。


※クマリン=マメ科,セリ科などの植物に含まれる芳香族化合物。干し草や塩漬けの桜の葉の香りの本体で,香料原料に用いられる。 (三省堂提供「大辞林 第二版」より)

杏仁香・杏仁香酒
新潟県では,つぼみの塩漬けを杏仁香・杏仁子
(あんにんご)といい食用にする。また,果実酒は杏仁香酒(あんにんご酒)という。
では,なぜ杏仁
(あんにん)なのか?
杏仁豆腐で知られる杏仁
(あんにん)は,アンズの種子から採れるわけだが,その匂い成分は「ベンズアルデヒド」というものだそうだ。この匂いが,ウワミズザクラの「クマリン」の匂いと似ていることから,杏仁香と言われるようになったらしい。

材は硬く,器具材,彫刻材,桜皮細工
(かばざいく),床柱などに利用される。
名の由来
「上溝桜」(ウワミゾザクラ)の転訛とされ,かつて亀甲占いで輪切りにした材に溝を掘って使用したことに由来すると言われている。(2)
しかし,深津氏,小林氏はこれは誤りで,材そのものに溝を掘ったのではなく,鹿の肩甲骨に溝を掘り,それを燃やす材としてウワミズザクラが用いられたと指摘している。
(3)

俗説としているが,花序が垂れた様から「上不見桜」(=上を見ない桜)という説も紹介されている(3)
岡山県情報
岡山県内では県北・中部の山地に自生する。日当たりが良く,やや湿り気のある谷筋を好む。
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