いっぱんに,「マツクイムシ」の被害(ひがい)などといわれますが,じっさいには,マツクイムシという生き物はそんざいしないそうです。
松枯れの直接かんけいがあるのは,マツノザイセンチュウというセンチュウの一種だそうです。しかし,そこにはマツノマダラカミキリ,マツノザイセンチュウ,青変菌(せいへんきん)の3者の巧妙とも言える共生関係があるということをうかがいました。 |
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▲上の写真は,マツノマダラカミキリが,卵を産みつけるために開けたあなです。大あごを使って左右から切りつけるために上のようになるのだそうです。成虫は,やや弱った木をえらんで産卵(さんらん)します。この松だけで数十カ所同様の傷が見られました。
マツノマダラカミキリの成虫は健康なアカマツの枝を食べる。そのときマツノザイセンチュウは,マツノマダラカミキリの腹から出てきて,アカマツにのりうつる。(6〜7月) |
▲これは,マツノマダラカミキリの幼虫が,木を食べたあとです。はじめのうち幼虫は,深くもぐらず,樹皮(じゅひ)のすぐ下の材を食べて成長するのだそうです。 |
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▲その後,幼虫は木の中に深く入り,食べながらこずえの方向に進んでいきます。これは,幼虫が通ったあとのあな。入り口からかならず上方向に進むのだそうです。 |
上の幹の断面に,放射(ほうしゃ)状に青いぶぶんがみえるでしょうか?この青いのが「青変菌(せいへんきん)」といわれるものだそうです。
マツノザイセンチュウは,青変菌を食べものにしている。マツノザイセンチュウは,青変菌といっしょにマツノマダラカミキリによって,移動していく。 |
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下のやじるしの方向から材内に入り,こずえの方向に食べながらすすみ,さなぎになるためのへやを作る(青いまる)。成虫になると上のやじるしから出ていくのだそうです。
マツノマダラカミキリが成虫になるころに,さなぎのへやに,マツノザイセンチュウがあつまってくる。そして,成虫になったマツノマダラカミキリの体内に青変菌とともにのりうつる。 |
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ついに発見!
これは,マツノマダラカミキリの幼虫です。小さいながらも,あごはとても発達していました。
昔の人は,この幼虫を貴重なタンパク源として人によっては生食していたという話を聞きました。「水がわりじゃ!」と,頭をのこして,「ちゅるん」と食べたとか…。 |
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こうしてみてくると,マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウ,青変菌の巧妙とも言える共益関係が見えてきます。つまり,マツノマダラカミキリは,自分では移動できないマツノザイセンチュウの運び屋となります。そのかわりに,マツノザイセンチュウは,元気なアカマツを枯らし,マツノマダラカミキリの産卵場所を提供するという関係です。 |
しかし,松枯れが大きくすすむ原因をつくったのは,やはり人間だとも言われています。かつては,下草かりをするなどして,燃料としてのアカマツ林を大事にし,ほごしました。そして,枯れた松は,燃料として有効に活用されました。
ところが,近年まきをたく必要もなくなり,ふえすぎたアカマツ林は放置され,枯れ松も活用されず残されるようになりました。
ふえすぎたアカマツ林に,それを管理しなくなった人間…そこにバランスのくずれが生じたということだそうです。 |