郷土記念物御前神社の樹林(岡山県総社市延原),かのんの樹木図鑑
←検索サイトから来られた方は,ホームへおいで下さい!
岡山県総社市延原に位置する「郷土記念物 御前神社(おんざきじんじゃ)の樹林」へ初めて行ってみた。いつもながら持ち時間はわずか…特に今日は2才の子連れで雪もちらついていることもあり1時間が限界だろうと,ざっくりと境内周辺を見て回った。(2012.2.4) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
参道の入り口にいきなりアカガシの老大木が。手前の株は枯死しており,その裏側にもう1本ある。 御前神社の樹林は標高380〜410m。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
御前(おんざき)神社は吉備武彦命(きびたけひこのみこと)をまつり、社伝によると清和天皇の貞観(じょうかん)15年(873年)に勧請(かんじょう)されたとあります。 神社の樹林は鳥居から参道、境内にかけて大小約60本のアカガシが林立し、県下でも最大規模のアカガシ優占樹林で、環境庁の特定植物群落にもなっています。アカガシはブナ科の常緑高木で葉が厚く葉縁にはほとんど鋸歯(きょし)がありません。材が赤いのでこの名がついています。 また、暖かい地方の海岸地に多いとされるタブノキが、内陸部である当地で見られることは注目されます。 (右の案内板より) |
参道の両側には樹皮が不規則に剥がれたアカガシの大木が立ち並ぶ。 最近訪れた美咲町の両山寺よりここはかなり南のはずだが同じようなアカガシのある風景に驚かされた。 同年2月11日に再び訪れた際,気付いたのであるが,境内周辺にはアカガシのほかにツクバネガシの大木も何本かあるようだ。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
高木層 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
樹林の大部分でアカガシが優占しているが,周辺部ではタブノキが多い印象を受けた。また,ツクバネガシが点在しているほか,モミの大木も見られた。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲参道の両脇に立ち並ぶアカガシ(ブナ科)の老大木。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲内部が「うろ」になり枯死した株もいくらかあった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲ツクバネガシ(ブナ科)の老大木。アカガシに比べると明らかに本数は少ないが,幼木や背丈程度の株もあり,しっかりとこの地に根付いているようだ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲タブノキ(クスノキ科) アカガシとは一見して雰囲気の異なる樹皮の大木が目に入った。平坦で皮目多い樹皮…。なんだろうと見上げてみると常緑樹。よく見るとタブノキ(クスノキ科)の大木であった。海岸部に多いとされるタブノキがアカガシ林内にあるというのは普通では考えにくい光景である。なお,様々な成長段階の個体が見られることから,この地にしっかりと定着していると思われる。 また,株立ち状のものが多いことから,かつて伐採された経緯があるのではないかと思う。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜高木層 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜高木層ではヤブツバキが最も目立っていたが,ほかにもヤブニッケイ,サカキ,ソヨゴ,カナメモチなども普通に見られた。個体数は少ないがカクレミノもあった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲カクレミノ(ウコギ科)。 アカガシ林内にカクレミノというのは何とも不思議な光景。しかし,中には目通り周囲が30pを超えるものもあり,ひざ丈ほどの幼木も3株見かけたことから,それなりにこの地に根付いていると思われる。 本来暖地に多いカクレミノが,このような標高の高い場所にあるのは何とも不思議であるが,照葉樹林内の安定した環境が,急激な気温の変化や霜などから生育を助けているのではないかと思う。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
低木層 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
低木層ではシロバナウンゼンツツジが多いのが印象的だった。ほかにはリンボク,シャシャンボ,ミヤマシキミ,ヒサカキ,アセビ,ビロードイチゴなど。また,アカガシ,ツクバネガシ,タブノキ,モッコク,カクレミノ,シロダモ,ヒイラギ,ネズミモチの幼木がよく育っていた。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲シャシャンボ(ツツジ科) 温暖な沿岸部が分布の中心だが,吉備高原のこのような標高の高いところにあるにはやはり不思議。 |
▲トベラ(トベラ科) これはさすがに植栽か?境内の北隅になぜかトベラが…。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲リンボク(バラ科) 一株だけだがリンボクを見つけた。背丈ぐらいの高さ。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ぱっと見だが,高木層にはアカガシ,タブノキ,ツクバネガシ,モミ。落葉樹ではタイサンボク,タカノツメもあった。しかし,やはりアカガシが圧倒的に多く,また様々な成長段階の株が見られる。亜高木層にはヤブツバキ,ヤブニッケイ,サカキ,ソヨゴ。低木層にはヤブコウジ,ツルアリドオシ,ヒサカキ,ヒイラギ,アセビ,ツルシキミ,マンリョウ,シロダモ(幼木),モッコク(幼木),モミ(幼木)などを確認した。 |
(注)作者は専門家ではありません。あくまで趣味のページですので,まちがった情報もあるかもしれません。まちがいを発見された場合ご一報いただければ幸いです。