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九谷の樹林(柏原神社の社叢)

岡山市御津宇甘の九谷にある神社の社叢林。何度か山中を歩き回ったが,興味の尽きない森林である。
郷土記念物 九谷の樹林
この樹林は,山野神社(柏原神社)を取り巻くイチイガシを主体としにしたもので,スダジイアラカシヤブツバキアカシデなどが高木層に混じり,下層にはシラカシヒサカキアオキネズミモチなどの常緑広葉樹が育成しています。また,イチイガシキジョランなど
暖帯林の指標となる植物が,小規模ながら豊富に自生し,学術的にも貴重な存在となっています。
(左に示した看板より転写)
▲宇甘川をはさんだ対岸からみた社叢林。少し白っぽく見えるのがイチイガシで,樹冠がこんもり丸く,濃い緑色に見えるのがスダジイのようだ。(2012/12/31)
▲神社から森を望む。ひときわ高く頭を出している高木(▲)が,イチイガシ。手前にある高木はアラカシ。(2009/12/6)
優占種はイチイガシで,個体数は多くないものの巨木が数本あり,遠目にも目に付く。やや奥まったところにはスダジイの巨木もあるが,イチイガシよりは低く,数も少ない。シラカシの巨木もあるが個体数は少ないようだった。
ただ,イチイガシの堅果はたくさん落ちているのだが幼木はほとんど見かけなかったが,スダジイの幼木はいろいろな成長段階のものが見られた。今後,遷移が進めばスダジイ林になるのでは…という印象を受けた。
▲イチイガシの巨木
縦長に割れ目ができて,剥がれ落ちる。
▲スダジイの巨木
縦に深い割れ目がある。
▲イチイガシの幼木。
見つけたのはこれ1株のみ。これより成長した株も見つけられなかった。
▲スダジイの幼木
暗い林内でもここまで成長してきている。スダジイは乾燥には弱いが,耐陰性は強い。
落葉樹では,ケヤキアカシデの大木が本数は少ないもののよく目立っていた。落ち葉から,ホオノキナラガシワコナライロハモミジカキノキがあることも確認できた。
▲ケヤキ(ニレ科) ▲アカシデ(カバノキ科)
亜高木層で,最も目に付いたのはサカキヤブツバキ。出現頻度は低いものの目通り周囲が40pを超えるカクレミノもあったのには驚いた。シキミは,幼木が多かったが中には亜高木層に達するものもあった。ヤブニッケイは個体数が多かった。
▲カクレミノ(ウコギ科)
県南ではふつうに見られるが,中部ではめずらしい。大きなものでは目通り周囲が40pを超えた。
▲コヤスノキ(トベラ科)
個体数は少ないのかと思っていたが,林内に入ると意外にもいろいろな成長段階の株を見られた。
▲リンボク(バラ科)
個体数は少ないが,人の背丈ぐらいに成長していた。
▲ヤブニッケイ(クスノキ科)
個体数が多く,様々な成長段階のものがあった。
ほかに,ネズミモチカヤ,林縁部でアオキムラサキシキブが見られた。
また,低木層で注目すべきは,イズセンリョウジュズネノキ(ナガバジュズネノキ)である。高さは50p程度だがイヌガシがあったのにも驚いた。
▲イヌガシ(クスノキ科)
個体数は少なかったが局所的に群生していた。果実をつけたものも1株残っていたが,あとは冬芽をつけた状態だった。
▲イズセンリョウ(ヤブコウジ科)
低木層では個体数も多く,優占種といってよい。乳白色の萼に包まれた液果を実らせ,つぼみもたくさんついていた。
▲ジュズネノキ(ナガバジュズネノキ)(アカネ科)
この林内で見つけたのは上の3株のみ。いずれも高さはひざ丈かそれより低い。果実は付いておらず,小さなつぼみが付いたいた。探せばもっと見つかるのかも知れないが,出現頻度が低いことは確かである。この地から無くならないでほしいと願うばかりである。
▲カナメモチ(バラ科)
尾根筋に近いあたりに,幼木を確認した。
▲シロバナウンゼンツツジ(ツツジ科)
ほかに,シロダモナンテンがやや林縁部に近い辺りで見られた。
林床は,非常にすっきりとしており,歩きやすい林内だった。数は少ないものの,ヤブコウジツルシキミジャノヒゲが見られた。
▲ツルシキミ(ミカン科)
ツル植物では,林縁部を覆うようにキジョラン,林内でチトセカズライタビカズラムベが見られた。
自宅から比較的近いこともあり,時々立ち寄っている。イチイガシ,コヤスノキ,イヌガシ,ジュズネノキなど,ほかではなかなか見られない植物を観察できる貴重な場所である。
それにしても,なぜここに,暖地性のイチイガシや,イヌガシ,イズセンリョウなどがあるのか不思議でならない。
(注)作者は専門家ではありません。あくまで趣味のページですので,まちがった情報もあるかもしれません。まちがいを発見された場合ご一報いただければ幸いです。

 

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