岡山県高梁市巨瀬町,祇園山,祇園寺,かのんの樹木図鑑
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祇園山 郷土自然保護地域

岡山県高梁市巨瀬町の祇園寺を中心とする祇園山郷土自然保護地域
祇園寺

真言宗善通寺派別格本山祇園寺は,標高500m,境内の広さは4500平方メートルで,弘仁3年(812)夏,弘法大師が自らこの山頂に達し,寺門の基礎を固められた。ここには石造宝塔(鎌倉時代)天狗杉(大師お手植)千手観音(藤原時代)仁王尊(伝運庭作)大師作秘伝(牛頭天王
(ごずてんのう))社)など数々の文化財があり開創以来の繁栄を物語っています。毎年8月27日の夏祭りに踊られる祇園踊(ぎおんおどり)は300年の歴史をもち,貴重な無形文化財としてまた,郷土の誇りとして受け継がれています。この寺の周辺には害を封じられたマムシとヒル,大師河など弘法大師にまつわる伝説が豊富です。
(環境省・岡山県)
祇園山郷土自然保護地域
(略)
祇園山(標高550m)は,吉備高原上にあって,周囲の山並みより一段高くなった流紋岩の残丘で,ここから南東に伸びるゆるやかな起伏の丘陵地には美しいアカマツ林が広がっている。頂上にある祇園寺は,平安時代のはじめ弘法大師が開いたと伝えられる由緒ある寺院で,本堂の脇には,大師お手植えといわれる天狗杉(樹齢1200年)が根をおろしています。また,社殿背後にはヤブツバキサカキウラジロガシアカマツモミなどの自然度の高い樹林が残っています。これらの美しい樹林と,境内や参道沿いに残る歴史的建造物が郷土的な景観をつくり出しています。
…(略)… 岡山県
祇園の天狗大杉
略)大杉も弘法大師お手植えといわれている。
巨大な千手観音が立っているかのように見える大杉は,大山に行く天狗が羽を休めたというので,天狗杉といい伝えられている。
1200年という樹齢には思えない若々しさで,木肌は輝き,樹勢は旺盛で,高梁市指定重要文化財である。(昭和38年7月26日指定)

目通り周囲 8.5m
樹高 27m
推定樹齢 1200年

平成9年3月 高梁地方振興局

(境内の案内板より引用)

「巨樹老樹を訪ねて」(岡山県環境保健部自然保護課,1992年)によると,推定樹齢1000〜1200年,目通り周囲8.5m,樹高37m。目通り周囲は同じだが,樹高が10mも高く書かれている。
祇園寺の樹林を外から眺めれば,やはり最も目立つのはモミの樹冠。ところどころにスギのとがった樹冠も見える。林内にはウラジロガシの大木が結構あったが,離れてみると高さ的にはモミスギに及ばないようだ。林縁のもこもこした樹冠はほとんどウラジロガシ
林床・低木層
ヒサカキ,ヤブツバキ,ソヨゴ,ウラジロガシ,ネズミモチなどの芽生えや幼木,ミヤマヨメナ,ヤブコウジなどが見られたが,圧倒的な存在感を示していたのがツルシキミ。場所によっては大きな群落をつくっていた。
▲ツルシキミの群落。林内では圧倒的な存在感を示していた。
▲果実をつけたツルシキミ。
▲高木のないところにはチマキザサが繁茂していた。
亜高木層
マダケが相当,林内に入り込んできていた。目に付いたのはヤブツバキサカキヒイラギネズミモチヒサカキイヌツゲウリカエデコハウチワカエデと思われる落ち葉も目に付いた。
カゴノキはまったく見かけなかった。
▲ヤブツバキ(ツバキ科)
樹皮に黒い筋がついている。以前にも見たことがある。菌類や地衣類だろうか。
高木層
幹の太さでも個体数でも圧倒的な存在感を示していたのはモミだった。ところどころにスギウラジロガシの大木がある。落葉樹ではタカノツメアカシデが目立っていた。コナラアベマキは余り目に付かなかったが,落ち葉はたくさんあったので,意識してさがせば結構あったのかも知れない。
▲ウラジロガシの大木があちらこちらにあった。上の写真のように元々の幹は朽ちてきているが,ひこばえが成長し,世代交代を果たしている老木が結構多いと感じた。
▲タカノツメ(ウコギ科)
独特の白くのっぺりとした樹皮が目に付いた。
▲アカシデ(カバノキ科)の大木
胸高周囲で100pぐらいありそうだった。
▲祇園寺の境内から参道側の山を眺める。モミの大木がひときわ抜きん出ているのがよく分かる。
★祇園寺で見つけたちょっと珍しい(とわたしが思う)もの。
▲エゾゼミの抜け殻
エゾゼミの抜け殻を3個見つけた。ふだんは見かけない種類のセミだ。クマゼミよりもやや大きく,赤味を帯びている。表面に土が付いていることが多いのも特徴だ。
▲マゴジャクシ(マンネンタケ科)
…ではないかと思う。傘の表面は暗紫色で強い光沢があった。夏から秋にかけてマツやモミの切り株近くの地面に発生するそうだ。
▲イノシシの糞
まだ乾燥しておらず新しそうだった。この後,ドキドキしながら林内を歩くことになった。
▲ぬたば(沼田場)
ぬたばとは,イノシシが体表についているダニなどの寄生虫を落とすために泥を浴びる場所のこと。
▲ぬたばに残ったイノシシの足跡 ▲タブノキ(クスノキ科)
背丈ほどのタブノキを見つけた。標高500mのこの場所で見かけるとは思わなかった。
▲祇園寺に向かう途中の道沿いで見つけたタブノキ。境内の裏手で見かけた株は背丈ほどだったが,こちらは高さ6mほどはあるだろうか。目通り周囲も50pぐらいはありそうだった。岡山県内ではほぼ北限にあたる位置だと思う。
確認した植物(2012.1.21)
モミ マツ科
ツガ マツ科
アカマツ マツ科
スギ スギ科
ウラジロガシ ブナ科
コナラ ブナ科
アベマキ ブナ科
アラカシ ブナ科
タブノキ クスノキ科
ヤブツバキ ツバキ科
サカキ ツバキ科
ヒサカキ ツバキ科
ヤマザクラ バラ科
ヒイラギ モクセイ科
ネズミモチ モクセイ科
ツルシキミ ミカン科
カラスザンショウ ミカン科
シキミ シキミ科
アカシデ カバノキ科
タカノツメ ウコギ科
ヤブコウジ ヤブコウジ科
イヌツゲ モチノキ科
ソヨゴ モチノキ科
ウリカエデ カエデ科
コハウチワカエデ カエデ科
ミヤマヨメナ キク科
キッコウハグマ キク科
マダケ イネ科
チマキザサ イネ科
シシガシラ シシガシラ科
〜素人の考察〜
「祇園山」はモミが優先する樹林だった。モミはシイやカシ類と混生することが多いが,標高が500〜530mの「祇園山」ではウラジロガシと混生している。また,天然スギが多いのも特徴的だった。マダケがかなり林内に入り込んできており,今後どのように遷移が進んでいくのか気になる。
また,モミは極相林を形成する樹種だが寿命は比較的短いということだ。今後ウラジロガシとの競争はどうなるのだろうか。
参考文献
(1) おかやまの自然第2版,岡山県環境保健部自然保護課,1993年
(注)作者は専門家ではありません。あくまで趣味のページですので,まちがった情報もあるかもしれません。まちがいを発見された場合ご一報いただければ幸いです。

 

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